ドローン(無人航空機)とは

 ドローンと聞いて、多くの方々は複数のプロペラで飛行させる機体を想像していませんか?

 ですが、遠隔操縦や自動操縦で飛行する無人航空機を総称してドローンと呼び、ラジコヘリコプターやラジコン飛行機なども含んでいます。

 ドローンは近年に於いて飛躍的な進化を遂げており、様々な分野に活用されていますが、実は最初のドローンが誕生したのは1935年(昭和10年)頃、後に第二次世界大戦で英国と米国とで本格的な研究が行われていたと云われ、これがドローンのルーツで、当初は軍事用目的だったようです。

 1980年 (昭和55年) 頃、日本国内では低価格化と小型化の後押しもあって民間でも産業用ドローン(ラジコンヘリ)が活躍し始めました。

 主に農薬散布でしたが、その販売総数は3000機とも言われ、当時の日本は既にドローン大国でした。

運用とリスク

 2015年(平成27年)に個人向けドローン(マルチコプター)の販売を皮切りにドローン人口は急激に増加することになりますが、ドローンの拡散と共に事故の発生件数も増加、国土交通省が公表する事故報告件数は2015年で12件だったのが翌年には4.5倍へと急激に増加しました。

 それ以降は前年比10~30%の割合で増加しており、多くが対人、対物への接触や墜落との事です。

出典:国土交通省 航空安全 統計データ
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_ua_houkoku.html

ドローン操縦者の資格や免許は?

 これまでドローンは操縦する上で資格や免許と言ったものは必要ありませんでした。

 しかし、2015年 (平成27年) の「首相官邸無人機墜落事件」を契機の一つとして、ドローンの法整備が本格化し、同年12月10日に施行した改正航空法により、無人航空機(ドローン)の定義及び無人航空機の飛行ルールが定められました。

 国の重要施設(皇居・国会議事堂・防衛施設・原子力発電所・外国公館など)は警察により厳しく規制されています。

警察庁:小型無人機等飛行禁止法関係https://www.npa.go.jp/bureau/security/kogatamujinki/index.html

警視庁:小型無人機等飛行禁止法についてhttps://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/heion/drone.html

 一方、民間ドローン資格「ドローンスクール」が設立され、講習や試験、実技を修了すると証書が発行されるようになりました。

 ですが、この修了証を修得したからと言って、自由にドローンを飛行させて良いかと言えば、そうではありません。

 これはあくまでも民間スクールでの講習、実技等の修了証であって操縦免許ではないのです。

 人口集中地区以外、かつ高度150メートル以下の範囲であれば飛行が可能な地域もありますが、飛行する場所や飛行する方法により承認や許可が必要になります。

 要するに民間スクールの修了証ではなく飛行エリアを管轄する航空局空港事務所国土交通省等の『飛行許可証』の方が必要というわけです。

 また、ドローンを飛行させる上で基本的な知識や操縦技術の修得は当然のことですが、注意すべき点は、航空法小型無人機等飛行禁止法民法電波法道路交通法都道府県市町村条例等6つ に関する「法律・規制・条例」です 。

 国土交通省は事件・事故の発生急増を懸念し2019年(令和元年)に「飛行情報共有システム」のオンラインサービスを開始しました。

 これはドローンの飛行エリア、日時、操縦者、機体情報を登録する事で、他のドローン操縦者や航空機の操縦者が地図上で飛行経路等を確認できるシステムで、上空でのニアミスや衝突、事故の予防を目的としています。(主に対航空機対策)

 ちなみに空港では、ドローンの電波を監視しており、空港内で電源を入れれば、運行停止の処置を執ることがあります。

登録の義務化、国家資格の制定

 国土交通省が発表している事故多発地域(登録機体のみ)は北海道、新潟県、佐賀県の3地域が他県の5~10倍と群を抜いています。

 それも許可申請不要な地区で起きています。

 ドローンの操縦者登録及び機体登録に関しては取扱者側に委ねられてり、保険の加入も任意です。

 機体を購入しても登録しなければ誰が操縦しているのか分からず、未登録機体を取り締まるすべもないのが実情です。

 仮に未登録機が接触したとしても無保険であったり操縦者も分からなかったりすれば、泣き寝入りする可能性もあります。

 そこで、2021年(令和3年 ) 12月の制度改定で100グラム以上の無人航空機(ラジコン等含む)の登録義務化となり、2022年(令和4年)6月20日からは「リモートID」(識別情報や位置情報を遠隔発信する機器)の搭載が必須となるなど規制科目が追加されました。

 これはスイッチをオンにした段階で誰の機体が何処を飛行しようとしているのか、規制区域への進入や墜落ないか等を把握するためで、発信していないもの=不審物となり、対テロ等に役立てる為です。

 現在の世界情勢を見てわかる通り、ドローンは実際に兵器としても運用されており、日本国内に於いても、ドローンを用いたテロを含む事件が多発するのではないかと警戒されています。

 そもそもテロリストは正規の運用をしませんが、国民の安全の為に 「リモートID」 の効果に期待したいところです。

 国土交通省は現在、2022年 (令和4年) 度中を目処に有人地帯での補助者なし目視外飛行(レベル4)の実現を目指し、無人航空機の機体認証、操縦ライセンス、運航管理等について、制度の在り方について検討を行っています。

ドローン操縦者の国家資格です。

 そのうち、現行のドローンスクール等による修了証はなんら意味を持たないものになる可能性もあります。

 詳しくは下記URL、国土交通省・無人航空機の目視外及び第三者上空等の飛行に関する検討会の「令和3年度とりまとめ 本文」をご覧ください。

https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk1_000057.html

ドローンの活用、求められるスキル

 ドローンのポテンシャルは機種によって異なりますが、殆どが自動車に追従できるほどの速度が出せるものばかりです。

 国内に於いてドローンビジネスは、農業・土木・建設・測量・点検・搬送物流・警備・公共など14分野で普及しており、ドローン保有人口も増加傾向しているだけにドローン活用のメリットは大きいと見られています。

 特に高所作業や危険区域での作業効率向上や安全性、労働負担の軽減は大きく、人が入れない狭所作業にも効果が期待されている他、報道取材や事故・災害対策、河川や山林等での行方不明者捜索にも大きく貢献しています。

 他にも、広域調査(害獣対策)、生簀の巡回(水産業)、森林状況の可視化(林業)、工事進捗や測量(土木・建設)、資材・設備の管理・インフラ点検(橋梁・ダム・ソーラーパネル・プラント・トンネル・基地局鉄塔)、空撮(学校・部活動等での集合写真)などにも充分に役立つでしょう。

 ユーザーのニーズやアイデア次第では多様な活用が期待できるドローン。

 安全な飛行を可能にするためには、操縦者の適性能力や経験に加え、「法律・規制・条例」や運用におけるリスクを十分に理解し、制定される国家資格も取得するべきでしょう。

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